Introduction

ふれたい。ふれたくない。

雌雄同体のカタツムリは交尾の際に鋭い矢「 恋矢 れんし (Love dart)」を互いに突き刺しあう。この矢は交尾相手の生殖能力を低下させ、寿命すらもすり減らす。本作のタイトル『空の瞳とカタツムリ』は、故・相米慎二監督の遺作『風花』のタイトル変更案として最終候補まで残ったもの。監督は、相米監督の弟子筋であり『サンデイ ドライブ』『フレンチドレッシング』『なにもこわいことはない』など脚本・監督と二足の草鞋で活躍する斎藤久志。脚本を務めたのはテレビドラマ『深夜食堂』シリーズで脚本家デビューを果たし、本作が初のオリジナル映画脚本の荒井美早。
求めあうがゆえに傷つけあうしかなかった男女四人。触ろうとすればするりと逃げる儚い青春の終わりを繊細なタッチで叙情的に描きだす、新しい愛の物語。

Story

祖母の残した古いアトリエでコラージュ作品を作りつづける岡崎(縄田かのん)は、消えない虚無感を埋めるため、男となら誰とでも寝る生活を送っていた。
一方、夢鹿の美大時代の友人である高野(中神円)は極度の潔癖症。
性を拒絶し、夢鹿にしか触れられない。そして二人の友人、吉田(三浦貴大)は、夢鹿への想いを捨てきれないまま堅実に生きようと努めていた。学生時代、とても仲の良かった三人。しかし月日が経つにつれ、少しずつバランスは崩れていった。
そんな中、十百子は夢鹿に紹介されたピンク映画館でアルバイトを始めるが、行動療法のような日々に鬱屈していく。その映画館に出入りする青年、大友(藤原隆介)は、満たされなさを抱える十百子に心惹かれていくが……。
夢鹿と十百子、永すぎたモラトリアムは終わろうとしていた。